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塗料の構成 1、塗料に使われる原料 1) 主要素

1、塗料に使われる原料

 
塗料は、大きく分ければ、「塗膜になる成分」と「塗膜にならない成分」があり、それぞれが図のように構成されている。

 
塗膜になる成分の内、顔料以外の成分は、展色材(ビヒクル)と呼ばれている。
ビヒクル(Vehicle)とは、「乗り物」という意味の他に、「媒介物」という意味もあり、展ばして拡げる役割をするものであって、塗料として供給される段階では、流動性があるが、塗布された後に硬化するようになっており、塗料の性状、性能を決める重要成分であると言える。

 
1) 主要素
主要素には、前項に示すように、乾性油、天然樹脂、合成樹脂が使われる。
乾性油とは、空気に触れると酸化して固まる性質があるオレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸を含む植物油のことを言い、この油を使った塗料は「油性塗料」と呼ばれる。

 

 ただし、これらをそのまま使った場合、乾燥までに数日以上かかり、実用性がないので、加熱して乾燥性を改善したボイル油が使われている。
このボイル油は、亜麻仁油、大豆油、桐油等の植物油にマンガン、コバルト等の金属化合物(ドライヤー)を加えて煮沸し、乾燥性を高めた乾性油であり、油絵を描く時にも使われている。

 
天然樹脂とは、植物や動物から分泌される物質のことを言い、溶剤や高温の状態で融解する性質のある物質が使われる。

 
植物性のものには、よく知られている、ロジンのように樹木の液(ヤニ)から得られる樹脂や、こはく、コーバルのような化石樹脂があり、動物性のものには、ラックカイガラ虫の分泌物であるセラックがある。
従来、塗料の主要素は、これらの乾性油、天然樹脂であったが、それ程、耐久性に優れているわけではなく、戦後、耐候性の優れた合成樹脂に急激に切り替わり、特に、強い紫外線や風雨に曝される屋根、外壁等の屋外に使われる塗料には、以下に述べる合成樹脂が使われている。

 
①、アルキド樹脂
ポリエステル樹脂の一種で、この樹脂を使った塗料は、通称「ペンキ」と呼ばれており、塗料の俗称にもなっている。

 
無水フタル酸や無水マレイン酸等の酸とエチレングリコールやグリセリン等のアルコールを反応させて、水等を脱離させる縮合反応により作られる。
この樹脂は、油や脂肪酸で容易に変性することが可能で、油の量によって塗膜の性質が著しく違ってくる。変性する油の量を「油長」と称し、乾燥の速い短油、やや遅くなる中油、長油、さらに遅い超長油がある。
油量の少ない短油性アルキド樹脂は、焼付けに使われるフタル酸樹脂塗料、中油性アルキド樹脂はフタル酸エナメルの展色材となり、長油性アルキド樹脂を展色材とするものが合成樹脂調合ペイントである。

 
亜麻仁油や大豆油等の乾性油と共に縮合させた中油性アルキド樹脂は、溶剤により希釈することが可能で、溶剤が蒸発すると、空気中の酸素を吸収して樹脂が酸化重合、硬化して被膜を形成する。

 
このアルキド樹脂は、無水フタル酸を使うので、フタル酸樹脂エナメル(JISK5572)と呼ばれ、光沢がよく、耐侯性や付着性に優れ、一般的な機械や建具の上塗りに使われる。

 
乾燥性がよく使いやすい塗料であるが、低温のときの乾燥が遅く、初期の耐水性や耐アルカリ性が弱いのが欠点である。
ホームセンターで見かける一般的な日曜大工用塗料である家庭用木部金属部塗料(JISK5962)は、長油性フタル酸樹脂ワニスを主成分にして素人用に使いやすく調合されたものである。

 
同じく、合成樹脂調合ペイント(JISK5516)は、展色材にボイル油を使い、超長油(1種)、長油(2種)のアルキド樹脂塗料が混合されている。
1種は、建築物や鉄鋼構造物、2種は大型鉄鋼構造物の中塗り、上塗りに使われており、作業性がよく、価格が安いので従来の油性ペイントに代わって使われるようになったが、この塗料は、耐アルカリ性が低いので、コンクリートに使うことはできない。
そして、エポキシ樹脂や塩化ゴムにより変性(改質)したものは、耐水性、耐薬品性が高くなるので、屋外の構造材の重防食用に使われている。

 
②、アクリル樹脂
一般に、アクリル酸やメタアクリル酸の誘導体を主成分とする重合樹脂をアクリル樹脂といい、高性能で汎用的な樹脂である。

 
電光照明をつけた看板やカーポートの屋根材等に使われるように、本来、透明な性状をしているので目的の色を調色しやすく着色性に優れており、比重が軽く、また、他の樹脂と共重合させたものはアセトン等の溶剤に溶けやすいので、塗料に適した性状を持っている合成樹脂である。

 
熱硬化性のものと熱可塑性のものがあり、前者は、自動車、家電製品、その他工場で塗装される金属サイディングの焼付け塗装に使われている。
後者については、セルロース誘導体等で変性したセルロース変性アクリルラッカーがあり、乾燥性が良いので自動車補修用等に多用されている。
特に、セルロース・アセテート・ブチレート変性アクリルラッカーは、変色が少なく耐久性はあるので、メタリック塗装用として需要が伸びている。
同様に、熱可塑性アクリル樹脂をベースとしたものに、アクリル樹脂ワニス(JISK5653)、アクリル樹脂エナメル(JISK5654)がある。
これは、メタアクリル酸エステルと酢酸ビニルと共重合させており、耐アルカリ性や耐候性に優れているので、コンクリートやモルタル等の塗装や、現場塗装の吹付タイルのトップコート、あるいは、下塗りのシーラーとして使われている。
ここで言う共重合体とは、2種以上の単量体(モノマー)を混合して重合させた高分子化合物(コポリマー)のことであり、特定の樹脂の特性を改質することに役立っている。

 
戸建住宅の外壁塗装の場合には、吹き付けタイル等複層弾性塗料として使われ、塗り替えには、単層弾性塗料が使われることが多い。

 
この他、アクリル樹脂を水の中に乳化重合して分散させた“エマルジョン塗料”は、有機溶剤を使わないので、環境にやさしい汎用的な塗料として内外装用に広く使われている。

 
③、塩化ビニル樹脂
塩化ビニル樹脂自体は、非常に耐薬品性に優れた高性能な樹脂であるが、一方では、溶剤に溶けにくく付着性が良くないので塗料には不都合な性質を持っている。

 
塩化ビニル樹脂エナメル(JISK5582) は、このような性質を改質するために、酢酸ビニルをおよそ30%程度の割合で共重合させている。
1種は、主として屋内用、2種が屋外のコンクリート、モルタル、その他金属用とされており、耐薬品性に優れているものの溶剤の安全性の問題もあることからグリーン購入法の対象になって公共工事仕様書では廃止されることになり、一般住宅の塗装にも使われることは少なくなっている。

 
④、エポキシ樹脂
分子の末端に反応しやすいエポキシ基(-CH CH2O)を2ケ以上持っており、通常は、フェノール、アミン等活性水素を持つ化合物を硬化剤として混ぜることにより、ポリマーが形成される。

 
最大の特徴は、金属に対する付着性が高いことであり、電気絶縁性も高いので、防食性が要求される塗料や電子部品のプリント基板、コンセント等の電気絶縁材料や接着剤等に幅広く使われている合成樹脂である。

 
エポキシ樹脂系塗料には加熱乾燥型、2液乾燥型、酸化重合型の種類があり、この内、2液乾燥型については、この樹脂がポリアミド樹脂や無水フタル酸と反応して架橋する性質があることを利用し、主剤と硬化剤を反応させて硬化させるわけであるが、硬化剤を変えることにより多様な性能の塗料が開発されている。

 
エポキシ樹脂塗料 (JISK5551)は、1種は標準膜厚 30um 程度、2種は厚膜(60~120um)に仕上げられ、鋼製構造物やその他金属製建材に使われている。

 
一般に、耐薬品性が高く、付着力が強いので防食性が高い塗料ではあるが、耐候性が悪いので、外壁材の塗装には、下塗り材、中塗り材として使われることが多い。

 
コールタールを配合したものは、美観は良くないものの安くて海水やアルカリ性に対して強いので、タールエポキシ塗料として船舶、海洋工作物の重防食塗料として使われる。

 
コールタールのかわりに低分子量の樹脂で変性させた変性エポキシ樹脂塗料は、浸透性が高く、高性能な錆止め用プライマーとして使われている。

 
⑤、ウレタン樹脂
ウレタン樹脂は、ポリオール(-OH)とイソシアネート化合物(-N=C=O)を反応させて、ウレタン結合(-NHCOO-)させた高分子化合物である。

 
ウレタン樹脂は、建築関係の断熱材やシーリング材、車両関係のクッション材、繊維加工されたものは、スポーツウエア等の衣類等に使われており、塗料の用途の場合は、塗膜が、光沢や肉もち感、付着性に優れていて、高級な仕上がり感が得られることから、高級家具やフローリングの仕上げ塗りにも使われてきた。

 
塗料には、1液型と2液型があり、1液型には、アルキド樹脂系塗料のように酸化重合するものやポリマー(-NCO)が空気中の水分を取り込んで分子がつながる湿気硬化形タイプ、加熱硬化形ブロックタイプ、溶媒の揮発で硬化するラッカータイプもある。

 
また、同じ1液型であるが、最近、外壁用塗料として使われる1液水系反応硬化型ウレタン塗料は、水中にポリマーと架橋剤が安定して分散しており、水が蒸発すると両者が反応して硬化するので、性能の高い塗膜が得られるように設計されている。

 
2液型は、ポリオールを主剤とし、使用時に硬化剤のポリイソシアネート(-NCO)を混合して反応硬化させる。

 
欠点としては、ウレタン結合させるイソシアネート基(- N = C = 0)に、強い毒性があり、また、寝具の芯に使われているウレタンフォームをカッターで切断するとわかるように、まっ白な切り口が黄変する現象である。

 
最近は、このような性状を改良するために、モノマー(単量体)を予め重合させたプレポリマーである芳香族系イソシアネートや脂肪族イソシアネート化合物が使われるようになった。

 
そして、芳香族系イソシアネート系のものは紫外線により黄変しやすく、上塗り塗料として使えないという欠点については、ポリオール樹脂をベースにした主剤と無黄変性の脂肪族イソシアネート系化合物を硬化剤とすることにより改善された。

 
この建築用ポリウレタン樹脂塗料(JISK5656)は、付着性がよく、耐候性が高いので、コンクリートや非鉄金属等の上塗り塗料として建築分野の需要が伸びている。

 
特に、主剤として、アクリル酸エステルと共重合させたアクリルポリオール樹脂を用いたものが、アクリルウレタン樹脂塗料であり、低温作業性にも問題はなく光沢保持性も優れているので、建築用だけでなく自動車の補修にも使われている。

 
ただし、硬化剤(-NCO)が水と反応しやすいので、貯蔵中は容器を密封して変質を防ぐことと、高湿度時には水分と結合して尿素結合することになって塗膜性能が落ちるので注意する必要がある。

 
また、アルコールのOH基(-OH)と反応するので、アルコールを含むシンナーを使うことを避け、必ず、ウレタン塗料用のシンナーを使わなくてはならない。

 
⑥、シリコン樹脂
シリコン樹脂は、ケイ素(Si)を核としたシロキサン結合(-O-Si-O-)をもつ無機化合物をいう。

 
この結合体を持つケイ素化合物は、地球の表面を形作っている岩石を構成し、水晶やガラスの原料である石英等の主成分であることからわかるように、非常に安定した物質である。

 
本来のシリコン塗料は、分子の端末の水酸基が高温で反応し、脱水、硬化する性質があり、約600℃に耐える高耐熱性塗料であるが、低粘度のため顔料が沈殿しやすいということや価格が高いという問題があり、このような欠点を補うために、最近は、他の樹脂と組み合わせて変性したものが使われている。

 
アクリル樹脂と共縮合させたアクリルシリコン樹脂は、耐熱性が200℃前後に落ちるが、ウレタン樹脂系塗料よりも高性能な建築用塗料として大型建造物のカーテンウォールの塗装等の需要が増加している。

 
2液性の塗料は、硬化剤ではなく、触媒が作用して、空気中の水分と作用して硬化するので、比較的低温の状態でも硬化させることができる。

 
近年、外壁塗装用に需要が伸びている1液水系アクリルシリコン塗料は、予め、シロキサン結合を付加させたアクリルポリマーを分散させたエマルジョン塗料であり、塗膜の表面にシリコン成分を配列させるものである。

 
一般の合成樹脂は、炭素(C)を核とする有機化合物であるが、この物質は、無機化合物であるケイ素(Si) を核として、化学的に安定したシロキサン結合により架橋しているので、「有機物と無機物のハイブリッド」と宣伝されている。

 
耐熱性や耐候性に優れており、やや付着性に劣るものの、低帯電性のため汚れを寄せ付けない特性もある。

 
戸建住宅の塗り替えについても耐久性能の向上についてのニーズが高いので、近年は、各塗料メーカーから、アクリルシリコン塗料が販売されている。

 
⑦、フッ素樹脂
フッ素樹脂は、エチレン重合体の水素原子を1個以上、フッ素(F)に置換し、C-F結合させたものである。

 
C-F結合は、非常に化学的に安定していて、耐磨耗性、耐絶縁性、耐候性に優れており、化学工業、自動車部品、電線被覆、半導体等の幅広い分野に使われている高性能樹脂である。
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)と呼ばれる樹脂が代表的な樹脂であるが、この樹脂は、溶融、成型が出来ないので塗料用途には、共重合により改質したポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)が使われている。
このオルガノゾル系溶剤分散タイプの塗料は、焼付け温度が高く有機溶剤に溶けにくいという欠点があり、このような欠点を補うものとして 1980年代に溶剤可溶型フッ素樹脂が旭硝子で開発された。
これは、PTFEを構成するモノマーの4個のフッ素原子のひとつが塩素になって交互に規則性をもって分子を構成しており、フルオロオレフィンとアルキルビニルエーテルの交互共重合体(FEVE)と呼ばれている。
その後、フルオロオレフィンとカルボン酸エステルとの共重合体(FEVES)も開発されたが、これらは、PTFE に比べて耐薬品性や耐熱性にやや劣るものの今までの樹脂と比較して耐侯性が抜群に優れており、ビルの外装用や橋梁の中塗り、上塗り塗料として過酷な用途に使われ、近年は、塗り替え用途への需要も高まっている。
そして、最近、開発された日本ペイントの「4フッ化エチレン樹脂」は今まで使われていたモノマー(3フッ化フッ素樹脂)を構成するC-CI結合が比較的紫外線に弱いので、結合エネルギーの大きいC-F結合のモノマー(4フッ化フッ素樹脂)に組み替え、無機系樹脂を加えて更に耐侯性を高めたものである。
今のところ、3フッ化フッ素樹脂塗料と4フッ化フッ素樹脂塗料の性能差を現場レベルで判断出来ないが、両者共、従来の塗料に比べて抜群の性能を発揮するものであり、実用面では何ら問題ないと考えている。
大切なことは、本質的に施工品質の寄与率が高いので、樹脂本来の耐侯性能が生かされて耐久性能が発揮されるように、下地処理等の施工を的確に行うことである。

 
しっかりとした施工をすることにより所定の性能が発揮できれば、必然的に塗り替え間隔が長くなり、塗料の単価が高くても長期的には経済的な塗料であるといえる。

 
⑧、その他
外壁の塗り替え用塗料として使われるわけではないが、建築用には、下記のような塗料も使われている。

 
i) 水溶性樹脂……ポリビニルアルコールやセルロース誘導品であり、希釈していた溶剤が蒸発して塗膜が形成される。
耐候性が低いので屋内で使用され、この塗料を使った壁が古来の繊雑壁調の「ジュラク」と呼ばれるものである。

 
ii) ラッカー……溶剤にニトロセルロースや顔料を溶融し作られたものであり車や建材の補修塗料として知られている。
速乾性塗料のため刷毛塗りは出来ない。

 

 

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