『屋根裏の空間はたっぷりとる』
2021/02/10
『屋根裏の空間はたっぷりとる』
このごろは屋根つきのマンションが多く目につくようになった。
ちょっと異様な感じがするが、あれは単なる飾りではない。
いきつくところ、「外観より、住みやすさ第一」になったのだろう。
毎日住む家であれば、きれいごとをいってはいられない。
外観より実質だ。
屋根があるだけで、最上階に住む人は、夏、かなり過ごしやすくなる。
屋根をつけることによってできる三角の空間(屋根裏)が、断熱層になり、外気の温度が直接室内に入り込むのを防ぐからだ。
木造の場合、建物の格好により、屋根の意匠はいろいろで、一概にはいえないが、屋根の勾配を大きくとり、できるだけ屋根裏が広くなるようにし、風窓(通気孔)をとって、通気をよくすることが基本だ。
「家のつくりようは夏をむねとすべし」。
これは「徒然草」の吉田兼好の言葉だが、在来工法の家の出発は、まさにそこにある。
とり外し自在の襖も障子も、風が自由にゆきかうようにと生み出された工夫だし、夏の日差しを遮る庇もしかりだ。
屋根裏の通気もまたしかり。
高温多湿の夏に住みやすいように、先人は数々の知恵を残してきた。
冷暖房がゆき届き、日本の家も開放から次第に密閉されたつくりに変わってきた。
どうかすると、それがいいといった風潮があるが、とんでもない。
奇をてらった設計士の家には、木造の家でもたまさか陸屋根(フラットルーフ)などがある。
ちょっと見にはすっきり見えるが、どっこい、こんな家をつくってしまったら、後後泣くことになる。
フラットルーフでは熱容量が大きいから、いったん暖まると、なかなか冷えない。
夜中になっても暑い。
冷房をつけっぱなしでないと、眠れない。
家は見映えも大切には違いないが、それより以前に、毎日暮らす家であれば、快適で健康にいい家でありたい。
古くから伝えられてきた知恵を無視してはならない。
設計を専門家に頼む場合も「屋根裏が十分とれるようにお願いします」といえるくらいの見識をお施主さんにも、もっていてほしいと思う。