『大工に頼む前に』
2021/02/18
『大工に頼む前に』
これまで、住居をプランニングするうえで気をつけたいことなり、私の考え方なりを、いろいろ述べてきた。
「ここで、大工棟梁と協力しながら、家を建てる人のために、お互い気持ちよく仕事が進められ、しかも、機能上もよい家を建てるためにはどうしたらよいか。
少し問題を整理してみたいと思う。
<制約条件>
家づくりに当たって、まず最初に提起される条件は、
- 敷地の立地条件
- 十年くらい先までは考えた家族構成
- 現在と将来の社会的地位
- 家族の健康状態
- 建築費の調達
- 平均収入と経済規模
などであろう。
経済的な制約や、環境的な掣肘がまったくなければ、いかようにも好きなプランができるが、現実にはそんなことはありっこない。
〈希望はできるだけ具体的に〉
何ができて、何ができないか――。
プランは一つひとつ現実に即して、具体的に考えていく必要がある。
こうして限られた枠の中で、少しでもよい住居を建てなければならないわけだから、大工に頼む場合も、家を建てる目的、希望の要点を具体的に、箇条書きにでもしておくといいだろう。
「家族は何人で、金はいくらくらいならあるから、坪あたり何万円くらいで、これくらいの坪数の家を」といった頼み方をする人があるが、こんな場合に限って、設計図があらましでき上がってくるころや、
工事が進んできてから、あちこちの雑誌などを引っ張り出してきて、「実はこうしたかったのですが……」といって、大工を困らせることが多いものだ。
実際には、設計図一枚描くにも、相当の労力と時間がかかるものだ。
「線を二~三本引き直せばすむことじゃないですか」なんぞといわれたら、カチンとくる。
最初の打ち合わせの段階で、できるだけ具体的に希望を出しておかないからこうしたことになる。
〈資金計画は無理のないように〉
住居は一般の消費財や電気製品を購入するのとはわけが違う。
重々ご承知だろうとは思うが、少なくとも何百万、何千万円という金額のものを発注するわけだから、工事費の支払い計画はしっかりと検討し、無理のないようにしなければならない。
貸金の返済をあてにしたり、一方的に分割払いを押しつけたりしては、決してよい家が建つわけがない。
このことは、工事を請負う業者の立場になって考えてもらえば、説明するまでもないことだろう。