東京タワーを塗替える 塗装雑談あれこれ
2021/05/19
東京タワーを塗替える
塗装雑談あれこれ
昭和33年の年末に完成した東京タワーは戦後日本の躍進を象徴する建造物のひとつであり、2005年製作の映画「ALWAYS3丁目の夕日」に建設中のタワーが度々出てきます。
ところで、このタワーは5年に1回の割合で塗替えが行われてきました。(意外と知られていないです)
さびが発生する前に塗り替えるので、さび落としのため旧塗膜をはがすことがほとんどありません。
これまでの累積で塗膜の膜厚は800μm(新聞紙16枚程度)以上になります。
タワーの塗装面積は東京ドームの2倍に当たる7万8000㎡、塗料の使用量は(0.4㎏/㎡×78000㎡=3万1200㎏)20㎏入り石油缶で約1560缶となります。
このうち揮発性有機化合物(VOC)である有機溶剤は約24%(約7400㎏)含まれており、VOCは大気中に揮発すると化学反応を起こし、光化学スモッグの原因物質になります。
VOCの排出規制は改正大気汚染防止法(06年4月施行)に従って強化されていますが、屋外塗装工事は対象外となっています。
東京都は環境局が中心になって、VOC排出の自主規制を強く呼びかけ、メディアも水性塗料を採用した塗替え工事を積極的に取り上げました。
水性塗料の塗装系にすると、VOCが従来の塗装系に比べて75%以上も削減されます。
東京タワーは08年に創立50周年を迎えるに当たり、塗替えの一部に水性塗料を採用し、施工は07年3月半ば~年末までの集中工事で進められています。
作業時間はライトアップが消える午前0時から7時頃までです。
ケレン棒と呼ばれる工具でさびや汚れを落とし、下塗り、中塗り、上塗りを全てはけ(刷毛)塗りで行います。
高所ゆえに職人は塗料が飛散しないよう、かつ安全には細心の注意を払って工事を進めています。
要点
- 壮大な塗装面積と塗料の使用量
- 大気汚染防止に有効な水性塗料
- タワーの保守は5年周期で行われてきた