塗料のルーツを探ってみよう
2021/07/03
塗料のルーツを探ってみよう
壁画にも漆にも人は色を求めていた
人間は「表現したい」という欲求を持っている生物です。
色に関して言えば、特に赤い色は神聖視され特別な思いがあったと思われます。
紀元前15万~6万年にかけての旧人類ネアンデルタール人は赤土(酸化第二鉄)で身体彩画をしていました。
紀元前1万5000年前のフランスのラスコーや1万2000年前の北部スペインの壁画は動物たちが描かれ有名です。
赤鉄鉱、黄土、マンガン鉱、白亜土、骨を焼いた黒顔料に獣脂や血液に混ぜて描いたものと考えられています。
この頃が塗料の始まりと言えるでしょう。
紀元前4000~3000年頃の古代エジプトにはカーボン、赤土、黄土、石膏、ラピスラズリなどを使った墳墓内の壁画が残っています。
乾性油や膠、卵白などを結合材に用いるようになったのは紀元前2000年頃と思われます。
鮮やかな赤顔料である丹砂(辰砂)は紀元前200年頃の秦の始皇帝の兵馬俑でも使われています。
ところで漆は天然の代表的な塗料で、極めて長い歴史を持っていますが、中国から渡来したのか、日本でも独自に進化したのかよくわかっていません。
福井県の鳥浜貝塚遺跡からは縄文前期(5000~6000年前)の赤・黒漆が塗られた櫛と見られる遺物が出土しています。
また、約6000~7000年前の中国浙江省余姚市の加拇渡遺跡からは黒漆の上に赤漆が塗られた見事な椀が出土しています。
そして、近年、北海道南茅部町の垣ノ島B遺跡から約9000年前の朱塗りの埋葬品が出土し、一気に漆の歴史を1000年ほども書き変えました。
日本では漆は什器、工芸品、建築に幅広く用いられてきたほとんど唯一と言ってよい塗料です。
ヨーロッパでは乾性油による油絵具が広まるのは15世紀前半からであり、ボイル油(乾性油に空気を吹き込みながら加熱したもの)を用いた油性塗料が出現するのは8世紀中頃です。
ポイント
- ラスコー壁画が塗料のルーツ
- 日本では漆が唯一の塗料
- ボイル油ができたのは18世紀中頃