安芸の宮島 厳島神社大鳥居の塗替え
2021/08/20
安芸の宮島 厳島神社大鳥居の塗替え
現場施工の厳しさと達成感の素晴らしさ
宮島の正式名称は厳島(いつくしま)であり、大鳥居と厳島神社は1996年に世界遺産に登録されました。
この朱塗りの大鳥居が醸し出す風景は日本三景のひとつです。
大鳥居は平安時代以降、数十年から百年前後の間隔で建て替えられており、現在のものは8代目、1875(明治8)年に建立された日本最大の木造鳥居です。
大鳥居の形式は四脚(よつあし)鳥居とよばれるもので、2本の主柱は樹齢600年位の楠(くすのき)です。
柱の太さは6m以上もあり、海底に潜り込まないようにするため支柱の下には松の杭が何本も打ち込まれています。
大鳥居は立っているだけですが、台風が来ても地震が来ても倒れない、優れた建造技術だと言えます。
ここでは、楠材の劣化が進行したため、その海水に浸かる部分の補修工事の内容を紹介します。
移動が困難で干潮時に施工しました。
- 素地調整
カキ・フジツボ類の除去。
電動工具類や高圧水洗機では全く歯が立たず、回転ノズル式超高圧淡水噴射機の採用で、付着物を除去し、木肌を出します。
あらかじめブロックで囲いを造り、根元付近の水をポンプで排出し、ガスバーナーで加熱して水を蒸発させます。
根元を補強するため、ポリウレタン樹脂を注入しました。
また、根本の修復には現場で調製したエポキシ樹脂パテや樹脂モルタルを使用しました。 - 下塗り
水中硬化タイプの無溶剤型エポキシ樹脂シーラーを全体に塗ります。 - シーラー塗装後、直ちに水中硬化タイプの2液型エポキシ樹脂パテ(厚さ10㎜)を全面に付けます。
海水で浸食された部分には杉で埋木をして楠にビス止めをします。 - パテが硬化する前にガラス繊維をサンドイッチ状に布着せをします。
- 干潮時のみの作業のため、常に水との闘いでした。
ポイント
- 塗装により木材を樹齢分、生かせる
- 現場施工には臨機応変な対応が必要
- 厚膜施工にはFRPと同様な考えが有効