重要文化財明治の洋館を復元する 分析技術で明治時代の塗料と塗装を解析
2021/08/21
重要文化財明治の洋館を復元する
分析技術で明治時代の塗料と塗装を解析
重要文化財である旧岩崎家の復元工事にあたり、建築時と同様な存料を用いて塗装する事が必要になり、残存する塗膜層を分析することになりました。
旧岩崎家住宅の主体は洋館、ビリヤード室および和館からなり明治29年(1896年)に完成したと記録されています。
洋館、ビリヤード室は鹿鳴館(1883年)を手がけた英国人建築家コンドルが設計したものであり、明治洋風建築の代表作として高く評価されています。
洋館は木造2階建て、地下室付きで、建築面積は531.5㎡です。
欄干には見事な彫刻が施されてあり、塔屋頂上部や窓の半円飾り部、屋上庇などは銅板で重厚に装飾されています。
塔屋頂上部はルネサンス風で、柱の形態にはギリシヤ様式を取り入れ、正面玄関や壁面部にみられる飾りにはイスラム文化の香りが漂い、南側ベランダ床のタイルはイタリア風になっています。
また、洋館内部のいたる所で西洋文化と東洋文化とが融合しています。
湯島天神近くにある現存の建築物を見ていると、洋式文化を盛んに取り入れていた明治の意気込みと熱意が伝わってきます。
現在は一般公開されています。
洋館外装部(素地:檜と銅板)および内装部の各場所から採取した塗装片について、塗膜断面の観察と塗膜成分の分析から、建築時の塗膜層が残存するかどうかを解明しました。
明治時代の洋風建築物には重合油をバインダーに、白顔料には亜鉛華(酸化亜鉛)が使用されていました。
この油性調合ペイントが検出できれば、建築当時の塗膜層が残存すると言えます。
第1区間には油性調合ペイントの下塗り、中塗り、上塗りの3層からなる塗装系が規則正しく12回程度連続して存在しており、その塗膜はクリーム色で統一されていることが認められました。
この結果、復元塗装ができました。
ポイント
- 塗装は油性調合ペイントで塗られていた
- 周期的に高精度に塗替えられていた
- 明治のロマンが感じられる旧岩崎家住宅