新しい漆塗りの世界 植栽型開発券は魅力たっぷり
2021/08/27
新しい漆塗りの世界
植栽型開発券は魅力たっぷり
ゆっくり乾いて丈夫な被膜となる漆は自然界の産物であり、古来より我々の生活を豊かにしてきました。
しかし漆かぶれという、嫌われ者の側面もあります。
漆は漆の木から採取された樹液を加工した天然塗料です。
江戸時代の末期に黒船が洋式ペイント (ボイル油をバインダーとするエナメル) を日本に持ち込んでから、漆文化は庶民の生活から遊離し、さらに合成樹脂の開発で漆はますます高級志向の道を余儀なくされました。
地元で採取した漆で、地元の木工品を仕上げ、これを流通させて伝統産業は継承してきましたが、漆産品は確実に減少しています。
塗料・塗装工業においてもこれからは脱石油原料とCO₂排出量削減が重要です。
従って環境に優しい塗料としての漆 (常温乾燥、無溶剤、資源作物、資源植栽)に注目することは有効な方法だと言えます。
この観点に立ち、漆器や仏壇の域を脱し漆の利用拡大を目指した新たな漆を、京都市産業技術研究所が中心になって開発しています。
開発された漆は従来の漆と同じく漆膜独自の美しい肌合いを持ち、そしてエ業用への進出が可能な塗料です。
この漆の概要を従来の漆と比較していきますと、漆は常温で乾燥しますが、一定の湿度(相対湿度60%程度以上) を必要とします。
開発された漆は乾燥時間を大幅に短縮できるばかりでなく、低温低湿でも乾燥します。
さらに漆かぶれを軽減できること、屋外使用での光沢低下が少ないことなど、従来の漆では考えられないことです。
すでに実用化され多方面での利用展開がされています。
この漆で塗られた乗用車を左に示します。
約1000日、6万mの実走でも漆膜の美しさは保たれています。
さらに漆膜の光沢および光劣化の様子 (塗膜厚の減少)を定期的に測定しました。
紫外線と雨による漆膜を分解して行き、雨ジミや汚れは自然浄化されます。
屋外用や工業製品への漆塗装が身近になることでしょう。
ポイント
- 大幅な乾燥時間の短縮とかぶれを低減した漆
- 屋外使用でも光沢低下が少ない漆
- 漆器や仏壇以外への漆の新たな利用