塗膜の摩耗抵抗 要因解明が難しい摩耗界面の破壊現象
2021/09/12
塗膜の摩耗抵抗 要因解明が難しい摩耗界面の破壊現象
塗料・塗膜の性能
接触している2つの物体の1つが運動しようとするとき、または運動するとき、その運動を妨げようとする力が接触面で生じます。
この現象を摩擦と言います。
摩擦力が弾性限界の範囲内では摩擦ですが、物体がその力で塑性変形から破壊を伴う場合は摩耗です。
車両・航空機からカード類に至るまで、表面層の塗膜は常にほかの物体と接することになりますから、耐摩耗性は塗膜の重要な物性の1つです。
塗装工程において、時間・労力などの面から研磨作業の占める割合は非常に大きく、その良否は直接、塗装の仕上がりや作業能率に影響します。
耐摩耗性と研磨容易性は共に摩耗抵抗に関する性質ですが、両性質は相反します。
耐洗浄性も固体/液体間の摩耗とみなせます。
実用塗膜では、上塗り塗膜は砂じんの衝突や引っかきに抵抗する摩耗抵抗の大きいことが要求される一方、中塗り塗料は研磨作業性のよいこと、すなわち摩耗抵抗の小さいことが必要になります。
ここでは、塗膜の摩耗抵抗の評価試験機を2つ紹介します。
規格試験方法に関することは、JIS K5600-5-8・5-9・5-10・5-11を参照ください。
- 落砂摩耗試験機(JIS H8682-3:1999)規定量(2000±10㎖)の砂(オタワ砂または相馬標準砂)を約1m上方のホッパーからノズルを通して自然落下させ、塗面(水平に対し45°傾けて固定)に当てます。
- サザランド形摩耗試験機は、アームの先につけた摩擦体(底部に適当な研摩紙を装着する)の往復円弧運動により塗膜が研摩されます。
円弧運動の速度は約8m/分(毎分40回往復)と小さいため熱の影響が少ないこと、実際の研磨作業に似ていること、比較的再現性も良いことから、研磨作業の要因解明に使用されてきました。
ポイント
- 摩擦力が弾性限界を超え、破壊に至ると摩耗
- 上塗り塗膜の耐摩耗性と下地塗膜の研磨容易性
- 実用、使用条件にあう試験装置の開発が必要