機能で広がる塗料の用途 擦り傷を防止する スチールウールでこすってもOKのハードコート
2021/09/18
擦り傷を防止する スチールウールでこすってもOKのハードコート
機能で広がる塗料の用途
プラスチックはその加工性と用途の広がりからまさに20世紀を代表する工業材料と言えましょう。
例えばアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂はその透明性を生かした様々な用途に使用されています。
しかし、こうした樹脂は磨耗傷がつきやすいといった弱点があります。
そこで表面の硬度を増し、耐摩耗性を向上させ、プラスチックのもつ弱点を改良するのがハード(硬い)コートです。
塗料分野では硬さの評価に鉛筆を用いる方法がありますが、通常の焼付け塗料では2H程度が限度であるのに対し、ハードコートでは5H~7H程度が可能です。
また、スチールウールによる磨耗の程度も著しく向上します。
ハードコートはシリコーン樹脂系と紫外線(UV)硬化系に大別できます。
シリコーン樹脂系は一分子に反応点(X)が3個、4個あるRSiX₃,やRSiX₄のようなシリコーン化合物を硬化させ、あたかもガラスに似たSi-0-Si結合で繋がった硬化塗膜にしたものです。
硬度を上げたり脆さを改善するためにコロイダルシリカ(コロイド状の微粒子シリカ)などを併用することも一般的です。
紫外線硬化樹脂系は反応性の2重結合(C=C)をもつアクリルモノマー(アクリル樹脂原料の低分子量体)やもう少し分子量の大きいオリゴマーを組み合わせて、非常に密な状態で官能基が反応し硬化するよう設計した塗料です。
塗料には紫外線によって反応の開始剤になる光開始剤が含まれ、硬化を進行させます。
シリコーン系ハードコートは最も高い硬さを得られますが、硬化に長時間を要します。
一方、紫外線硬化系は硬さは劣りますが、数分以内の硬化時間で完了する利点があります。
ハードコートはプラスチックガラスやレンズなどの各種プラスチック製品の他、パソコン、携帯電話の筐体、テーブル、人造大理石の塗装など多方面に用いられています。
ポイント
- 硬度、耐摩耗性を上げるハードコート
- シリコーン系は高硬度に特徴
- 紫外線硬化系は短時間硬化に特徴