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塗料の構成 #4外壁の耐久性

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塗料の構成 #4外壁の耐久性

塗料の構成 #4外壁の耐久性

2021/10/22

#4外壁の耐久性

塗料の構成

外壁に塗られた塗膜は、外壁の基材を被覆して、紫外線や有害なガスの影響を遮断して、外壁自体の劣化を防ぐ役割をしている。

塗料の膜が劣化した段階で塗り替えれば、基材自体の耐久性を伸ばすことが出来るので、耐久性のある塗料を採用することは、建物の維持管理にとって非常に重要なことといえる。

汚れの防止

外壁に塗布された塗膜に汚れが付着した場合、建物が非常に見苦しくなる。

現実に、外壁を塗り替えるお客様の多くは、塗膜が劣化したというよりも、「汚れ」を気にして塗り替えを決断されていることが多いようであり、「汚れにくい」ということも重要な要求品質である。

耐汚染の性能を評価するための促進試験については、下記のような方法があるが、実際に屋外に1~2年以上暴露する評価も行われている。

試験項目
試験方法
基準值
汚れ試験
JIS規定の試験用ダスト懸濁液で浸漬、乾燥を50回繰り返す
中性洗剤で洗浄し色差を評価する(色差5以下)

ここでいう「汚れ」とは、乾燥途中に塵埃等が付着する現象ではなく、塗膜が乾燥後に時間が経過して発生した汚れのことであるが、この汚れを防ぐためには、「汚れ」が発生する要因を知り、汚れとは何か、どうしたら汚れないかということも考えなくてはならない。

帯電性

合成樹脂は、一般に帯電しやすい物質であり、塗膜の表面も静電気を帯びて、ホコリを誘引して付着させる。

洗剤等に用いられる界面活性剤を使い静電気を逃すことにより汚れ防止をすることが出来る。

表面の平滑性と硬さ

塗膜の表面に艶がない場合、落ち着いた感じの仕上りが得られるが汚れやすい場合がある。
表面に艶を持たせた平滑な表面の場合は、外観上、光って見えるので、住宅の外装として嫌われる場合があるが、ゴミの付着しにくい表面であるといえる。

また、セメント系外壁に使われる弾性塗料の場合、塗膜面に付着しているゴミは、塗膜が粘着性があってやわらかいのでゴミが刺さるようにして付着している。

従って、塗膜面を硬くして、物理的に刺さらないようにすれば、汚れにくくすることが出来る。

水に対する馴染み(親水性・撥水性)

従来の外壁塗料は、耐候性が劣っているために、チョーキング現象をきたして表面に粉がふいた状態になることが多かった。

そのため、表面に汚れが付着しても、雨が降れば一緒に流れ落ちて汚れがつかないという「セルフクリーニング」というメリットもあった。

しかし、塗料の耐候性が良くなり塗膜が硬くなった結果、雨水の影響を受けた汚れが発生し、庇やサッシ水切り部の下部、あるいは、換気口下等に、雨だれかがよく見うけられる。

特に、雨水に亜硫酸ガス(SO₂)が含まれている場合、硫酸に化学変化し、金属部を傷めることにもなるので、水切り部からたれ落ちる汚水が外壁の表面を常時流れないように、下端の形状を変えることも雨跡防止に有効である。

外壁の表面が水をはじく性質(撥水性)ならば、雨水の汚れが付着しないようにも思われるが、雨水だけがはじかれて流れ落ち、油成分等を含んだ汚れだけが塗膜表面になじんで付着することにより壁面に残ることになる。

また、外壁の表面の水に対する「なじみ」も汚染性に影響する要因である。

水がなじむ場合は、「親水性」あるいは、「濡れ」という言葉で表現され、その水準は接触角(θ)で評価され、接触角(θ)が50°以下ならば、親水性が安定し、耐汚染性が良好といえる。

また、70°以上の場合は、汚れやすいレベルである。

最近、塗料メーカー各社から発売されている「低汚染性」塗料は、親水性を持たせるように設計され、水の接触角を小さくして濡れ(親水性)を高めことにより、汚れも一緒に洗浄される物理的な現象を利用した塗料である。

従来の塗料と比較して汚染性能が改善されているとしても、下記のような特性があることを理解し、必要な場合は、お客様に事前説明をすることが必要である。

 

  1. 低汚染とは、「汚れにくい」ということであって、非汚染、すなわち、「汚れない」ということではないので、お客様(施主)に事前の説明が必要であろう
  2. 水切りの構造的な不具合、水切りの錆、カビ等により大量の汚れが流れる場合、塗料の低汚染性能だけでは対処出来ない可能性もあるので安易な約束はしない方がよい。
  3. 塗装直後の塗膜は、完全に親水性になっているわけではなく、約2ヶ月かかって完全硬化した時点まで待たなければならない。

かび・藻

細菌、カビ、藻等は、同じような微生物であるが、細菌は、動植物と共生し分裂しながら増殖するが、カビは胞子が空気中に浮遊しつつ建物等に付着し、栄養源、水、酸素、適当な温度があれば胞子から菌糸を伸ばしつつ枝分かれしていく。

このようなカビ類は、「真菌類」と呼ばれ、身近なものでは、きのこ等もこの仲間であるが、自然界のカビは約45千種類あり、この内、50種類のカビが住宅に付くと言われている。

住宅に関わる主なカビ菌には、黒カビ(クラドスポリウム)、青カビ(ペニシリウム)、ススカビ(アルテルナリア)、ケカビ(ムコール)、黒色酵母菌(オーレオパシディウム)等があり、これらのカビ菌は、土壌中に無数に存在し、花粉と同じような胞子状になって空気中に浮遊し、体内に入った場合は、花粉症のようにアレルギー鼻炎を発生させることもある。

浴室や北側の壁等のような風通しが悪く、適度な温度と多湿状態の生育条件に合う個所に付着した場合は、付着した材料や付近にある樹木等を栄養源にして、光合成により繁殖することになる。

この繁殖は、気温25℃以上、湿度80%以上の環境で猛繁殖する。

藻は、胞子により繁殖し、コケ、シダ等と同様に水を利用して光合成する生物であるが、胚を持たないのが特徴である。

木材の木肌、水槽の壁、建物の北側の風通しの悪い壁に青緑色に付着して著しく美観を損ねることになる。

この環境は、高温多湿の日本の気象条件と合致しており、梅雨時に猛繁殖し、夏が過ぎ、気温が低下し空気が乾燥した場合、カビ菌も乾燥して死滅し、外壁面を黒ずませることになる。

カビ菌は、空気中のチリ等のあらゆる有機物が栄養源となるので、前年に死滅した死骸も栄養となって翌年にも繁殖することを繰り返す。

カビは粘着物質を分泌して付着し、さらに、小さな穴に菌糸が侵入するので、表面を洗っても簡単には除去できないわけであり、住宅の外装材の塗装面について考えると、表面がざらついている外壁には付着しやすい。

特に、セメント系素地について考えると、施工直後はアルカリ性が強いのでカビは繁殖しないが、放置しているとpH値が下がって繁殖することになる。

この素地の上に塗装している場合、表面の素材は合成樹脂の膜に覆われているので、表面は平滑になって付着性を低下させることが出来るものの時間の経過とともに付着しやすくなり、例えば、エマルジョン塗料の界面活性剤、あるいは、付近の樹木の樹液が栄養源になるので繁殖しやすいことになる。

一般的な防カビ対策として、メタノール等の有機溶剤を主成分とする防カビ剤が使われるが、持続性は小さく、カビの繁殖条件は整っているかぎり絶滅させることは困難ではある。

従って、洗浄剤を使って汚れを完全に洗い落とし、防カビ剤を塗布すると共に、表面が平滑で艶をもたせて汚れを付着しにくくした防カビ剤入りの塗料を塗ることによりある程度は再発を抑えることが可能であり、最近、塗り替えに使われる塗料には、一般的には防カビ剤が添加されている。

なお、塗膜の防藻、防カビ性能は下記の試験により評価される。

試験項目
試験方法
基準
防藻・カビ試験
JIS2911準拠指定試験菌を28日培養
藻・カビの発生なきこと

塗膜の劣化

塗料は、人間の細胞と同様に「生物体」である有機化合物で構成されており、人間が高齢化して衰えるように、「劣化」を避けることは出来ない。

耐候性について

有機化合物は、生物体を構成する重要要素とされているが、この成分は、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)を含む化合物により構成されており、約100000種類ある。

人間の細胞も同じように、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)により構成されており、人間も生まれてから10数年経過して成長し成熟するものの、その後は、徐々に老化(劣化)が進んで行く。

同様に、有機化合物である塗料(高分子化合物)の場合は、液体の状態から徐々に硬化し成熟するが、完全に乾燥硬化した段階から徐々に劣化が進んで行く。

この現象は、光や酸素、熱、あるいは、他の化学物質により、分子の一部が変成し、分子の鎖が切れることであり、特に、外壁塗料について考えれば、光(紫外線)の影響が大きい。

地球上のあらゆる物質が、太陽光線により数々の恩恵を受けているが、一方では、太陽光線の一部である紫外線により変質させられており、塗料の場合にあてはめれば、次の現象がある。

 

  1. 変退色
    顔料自体が光の影響を受けて劣化する場合、退色、黒変、色相変化等の現象を示す。
    塗膜全体の劣化については、主要素の良し悪しの影響を受けるので「耐侯性」という言葉で評価されるが、顔料だけの場合は、専ら、光の影響を受けるので「耐光性」という観点で評価される。
  2. ポリマーの劣化
    塗膜は、前述のように有機化合物であり、時間の経過と共に徐々に劣化、風化し、光沢を失ってきて、硬く、脆くなり、付着力が低下する。
    塗膜の劣化が進むと付着力が衰え、水や空気をさらに通しやすくなるので、日光の直射や気温の上下によって素地が収縮や膨張を繰り返した場合、ひび割れ、クラックを発生させる。
    塗膜自体の強度、付着状況や基材の表面性状等の特性は、千差万別のため、結果として、図に示すように様々な性状を示す。
    なお、塗膜の底まで割れている場合をクラックと言い、表面、もしくは、中間層で留まっている場合は、チェッキング、または、ヘヤークラックと呼ばれている。
  3. チョーキング(粉化)
    ポリマーが劣化して分子の鎖が切断されて分解して粉化し、閉じ込められていた顔料も遊離することなる。
    その結果、塗膜の表面をなでるとチョーク(白墨)のような粉が付着する。

 

耐候性は、これらの劣化現象の発生状態を評価することになるが、一般的な気象条件のもとで性能評価するためには、5年、10年と長期間の暴露試験を行わなくてはならない。

実務上は、より短期間に評価結果を得る必要があるので、沖縄、東南アジア、さらには、アリゾナ(米国)等の過酷な日光の当たる場所に試験片を暴露されて評価が行われている。

実験室では、キセノンウエザロメーターにより促進耐候性試験を行い、光沢の劣化を見ることにより評価されており、性能区分されている。

これは、およそ200時間の照射がり際の1年に匹敵するような過酷な人工の光を照射し評価を行う。

塗料メーカーのカタログには、光沢保持率の試験結果が表示されているが、目盛の刻み方が違うので曲線の形状が変わってくる。

一般的には、2000時間(もしくは1500時間)における光沢保持率の低下率かその低下率が80%段階の照射時間で比較するとよい。

単に、ビヒクルとして使われている合成樹脂の種類により比較すれば、耐候性は表のような結果になる。

ただし、この結果は一般的な目安であって正確なものではない。

なぜなら、塗料の耐久性は主要素である合成樹脂の種類だけでなく、その硬化方式、溶媒、顔料や添加剤の種類等の影響を受ける。

同じ合成樹脂の塗料であっても、溶剤系の塗料が、水系に比べてやや性能が高いと思われ、さらに、塗料に含まれる顔料は光を遮る役割もあるので、劣化現象の進行度は、着色に使った顔料の性能にも左右される。

また、塗膜の性能を維持するためには、塗料の劣化が進んでも、形成された塗膜を破れにくくすることも必要であり、その為には、塗布量を増やし、被膜を厚くすることも大切である。

塗装現場では、設計段階で企画された塗布量よりも実際に塗られている量が少なめになっているのが実態であり、塗膜の厚さと層の管理が重要である。

最近、一部の塗料メーカーや塗装業者が耐久性の高い塗料として、「セラミック」塗装を宣伝している。

本来、セラミックとは、陶磁器・タイル・セメント等の「ケイ酸塩鉱物」の焼き物をあらわす言葉であるが、最近は、アルミナと長石を焼成し、工作機械の工具に使用される「ニューセラミック」や電子部品に使われるような純度の高い「ファインセラミック」のように「熱処理によって特性の得られた非金属無機質材料」をセラミックと称している。
従って、「セラミック」と言えば、「錆びない」「燃えない」「固い」「腐らない」という高耐久性材料というイメージが定着している。

現在、塗料業界で「セラミック」と称した下記の種類の塗料があるが、業界の定義も決まっていまっていないようである。

 

  1. 石目調の仕上がり塗料
  2. 珪酸(シリカ)を結合材として添加した塗料
  3. アクリルシリコン樹脂(シロキサン結合)系塗料

 

色々なグレードがあるので、商品名にこだわらず主要素や結合材、価格と性能を見比べる必要がある。

いずれにしても、通常の塗料に比べて耐久性に優れているものの、塗料は完全無機質の陶磁器ではないので、本来の「セラミック」のような半永久的な耐久性は望めない。

特に、これらの塗料は、耐侯性が優れていることが強調されていると思われるが、一般に硬い塗膜が多いので、既存の塗膜が弾性塗料のようなやわらかい場合、上に塗布した硬い塗膜が割れることがあり、また、後述のように下地処理が悪い場合も、その性能を発揮できないいので意しなくてはならない。

剥れについて

塗料の耐久性は、紫外線を受けても劣化しない性状(耐候性)と有害な物質と接しても塗膜が下地に密着して割れない、剥がれないという性状(密着性)で評価される。

耐久性を確保するためには、塗料自体に耐候性があることも大切ではあるが、それぞれの素地に安定して密着していることも重要である。

従って、必ずしも耐候性=耐久性ではない。

前述のように、塗膜はファンデルワールス力という微弱な力により付着しているので、時間の経過と共に被着体が収縮、膨張、変形した場合、あるいは、塗膜の硬化収縮が進めば、基材の表面と付着した塗膜の間に応力差が生じることにより付着力が低下する。

また、塗膜は、空気や水を透過するので、時間の経過と共に下地に錆やその他酸化膜を形成させた場合も極度に付着力が低下し剥れることになる。

従って、厚ければよいというわけではないが、塗膜の厚さが厚ければ、塗膜強度を確保し、有害物質の遮断をするので、付着耐久性を高めるために有効であると言える。

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