塗装作業 #2塗料の塗布
2021/12/07
#2塗料の塗布
塗装作業
下地調整後、シーラーを塗布する。
シーラーは、素材の吸い込みを均質化し、塗膜に悪い影響を与える成分の遮断、あるいは、塗料の密着力を高める役割があるので、均一に塗ることが作業のポイントである。
素材に適合したシーラーを使っていない場合、あるいは、シーラーが基材にしみ込んでしまっていた場合には、経時変化により、塗膜の浮きやはがれを発生させることになる。
特に、シーラーは、顔料が配合されていなくて、低粘度で垂れやすい性質があるので、注意して均一に塗布しなければならない。
また、指定の溶剤、硬化剤を使っていない場合や、指定の混合比率を守っていない場合に、後に上塗りした時に、色ムラや艶ムラを起こす。
シーラー等を下塗り後、次に、仕上げ材を通常2回塗り(中塗り・上塗り)する。
美観を改善することが、塗装の大きな目的であるので、仕上げ材の塗布は、外装材の大きさ、形状、塗装仕様に応じて、下記の道具を適宜使用し、均一な塗膜を形成させるように努める。
刷毛塗り
- 種類
塗装という仕事は、江戸時代の末期から始まったが、毛を束ねた「刷毛」には、古来からある毛筆用の筆・あるいは・ふすま・障子・傘等に紙貼りするための糊刷毛があった。
それ程、能率的な作業方法とは言えないが、比較的簡単にさまざまな場所、形状のものに塗装が可能で塗料ロスが少ない塗装方法であるものの、仕上がり具合は作業者の腕(熟練度)に左右される。
塗装発祥の欧州では、洋刷毛(コッピー刷毛)主体で塗装をするが、日本では、平面的な部分の粘度の高い塗装には、通常、平刷毛が使われ、粘度の高い場合は、寸筒刷毛、丸刷毛、隅部は筋かい刷毛が使われる。刷毛の材料には、馬の尾(天尾)・たて髪(振毛)・腹の部分の毛(胴毛)・ひずめのうしろの毛(足毛)や豚・山羊・羊等の動物の毛、棕櫚等の植物繊維、ナイロン繊維が使われている。
それぞれの材料により、毛の硬さ、腰の強さ、塗料の含み具合等の性状が違うので、用途に合わせてこれらの毛が使い分けられる。一般的に使われる刷毛には、馬やロバの毛を使った「赤毛」や毛質が太く腰が強い黒豚毛を主体とした「黒毛」があり、山羊毛、豚毛、馬毛を80:10:10程度の比率に混ぜたものは「白毛」と称し、柔軟性があって塗料になじむので建築全般の塗装に使われている。
また、乾燥性の速い塗料は、根元で固まって毛切れを起こすことになるので、ナイロン製の刷毛が使われる。
刷毛のサイズは、通常、毛玉と言われる部分の巾が刷毛の柄(ハンドル)部分に表示されており、主要な刷毛のサイズを以下にしめす。
寸表示に対して、実際の寸法はやや小さめになっており、また、関西サイズはさらに小さめになっている。
なお、毛の長さ(毛丈)には、短毛(40~42mm)、中毛(50~52mm)、長毛(50mm~)があり、また、毛玉の厚さが違う物(薄口~厚口)もあり、塗料の粘度や含み具合により選択されて使われている。
刷毛は、使用する塗料の種類によって毛の硬さ等の特性に違いはあるが、一般に、毛玉がしっかりと固定されて抜け毛、毛切れがなく、毛先が揃い、毛腰が強く柔軟なものが良質で、その他に、塗料の含み、吐き出し、毛先のなじみが良く、刷毛目が出ないことが理想的で使いやすい。 - 使用方法
刷毛塗りは、塗料のロスが少なく、どのような形状の面にも使えるので汎用的な塗装方法であるが、作業能率が低く、また、きれいに仕上げるためには熟練が必要である。
新しい刷毛を使い始める場合は、毛を軽くしごいてゴミや抜け毛を落とし、次に、塗料を少し含ませて塗料をしごくことを2~3回繰り返して調整する。
刷毛には、塗料を根元までつけないで2/3程度まで含ませ、容器の内側で軽くしごいて、ポタポタ垂れ落ちないように注意しつつ塗り付ける。
外壁用の一般的な塗料は、速乾性ではないので、塗り付け、ムラきり、仕上げの刷毛さばきを行う。
刷毛を長持ちさせるためには、使用後、刷毛に付着している塗料をヘラ等でしごき落とし、うすめ液、中性洗剤で洗い落とす。
毛の根元に塗料が残っている場合は、毛切れを起こしやすく、また、動物の毛の場合は、材質がたんぱく質で構成されているのでアルカリ成分に弱いということを認識して丁寧に洗うことが大切である。
ローラー塗り
- 種類
一般的な筒状のローラーには、耐水性のある堅い紙や合成樹脂の円筒に羊等の動物の毛やポリエステル等の合成繊維を巻きつけたものや植毛加工がされたものがある。
ローラーのサイズは、フレームの構造と円筒の直径により分類される。
レギュラータイプ D = 38mm
標準タイプ D = 23mm
ミドルタイプ D = 26mm d = 9mm
スモールローラー D = 15mm d = 6.5mm
また、毛足の長さにより使い方に違いがあり、粗面には長毛タイプ、平滑面には短毛タイプが使われ、中毛タイプが万能的なローラーである。
優れたローラーとは、一般的には、ローラーの表面のうぶ毛が脱毛せず、ネタ含みがよく、塗料のはね返りや気泡の出ないものである。
その他には、ポリウレタン樹脂の「スポンジローラー」、表面に模様をつけた「パターン用ローラー」、凹凸面のヘッドを押さえて滑らかにする「ヘッドカットローラー」あるいは、コーナーや入り隅部分、屋根折板、あるいは、目地の溝等を仕上げるための特殊形状のローラーがある。
また、塗料を圧送して自動供給するものもある。
従来、集合住宅のような大きい建物については、作業性の面から吹き付け塗装を行うことが一般的であったが、この方式を使えば、周囲への飛散が格段に少なく、塗料効率を大幅に改善できる。
ポリウレタンタイプのものは、スポンジの発泡倍率により塗料の含み方等の特性が違い、平滑な面には、低発泡タイプを使う。
一般に、スポンジの成型体は、表面に薄い膜で覆われており、この膜を除去して気泡(骨)だけにしたローラーは、砂骨ローラーと呼ばれ、このローラーは、多量の塗料を含むことが出来るので、骨材入り塗料の塗布や厚膜で細かい模様の仕上げをすることが出来る。 - 使用方法
刷毛塗りと比較すると、非熟練者でも比較的安定した仕上りが得られる。
平面部ならば、刷毛塗りの倍の速さ(300 ~ 400 /日)で塗装出来るので作業能率が高く、外壁の厚塗り塗装が容易に出来る。
刷毛に比べて重量が重いので、効率的に塗料を配りならすようにローラーをころがすことが必要である。 ローラーは、切れた毛を落とした上で、ローラーネットの上をころがしながら均一に塗料を含ませ、W形にローラーを運んで配り塗りする。
その後、均一にならしてローラーの端部跡が残らないようにする。
吹き付け塗り
コンプレッサー(空気圧縮機)により圧縮された空気の噴流により塗料を霧状にして吹き付ける被装方法である。
ラッカーのように乾燥の速い塗料の塗装に適合する方式であり、仕上げ面が均一で、刷毛塗りの約10倍の作業スピードで塗装できるが、周囲に塗料が舞い上がり、ロスが多いのが欠点である。
スプレー方式を大別すると「エアースプレー方式」と「エアレススプレー方式」がある。
エアースプレー方式は、圧縮空気を使い、霧吹きのようにスプレーガンで噴霧化する方式であり、エアレススプレー方式は、塗料を加圧したガン(スプレーチップ)から水鉄砲のように噴射する方式がある。
エアレススプレー方式の方が直接噴霧のためムダが少なく、高粘度の塗料を吹き付けることが可能で、また、吐出量が多く、一度に厚膜塗装が出来るので、工業用の塗装に適しており、戸建住宅の塗装の場合は、狭い部分の塗装が多いので、普通のエアースプレー方式により塗装することが多い。
塗料の供給方式には、重力方式、吸上方式、圧送式がある。
圧送式の供給は同じ塗料を大量に使うコンベアー塗装に使われ、重力方式、吸上方式による供給は、色替えがある場合に使われる。
小さい部分の塗装や色替えの頻度が多い場合には、カップを使用する重力式が少量の塗料を効率的に使いきれる。
スプレーガンには、大型と小型のタイプがあり、重力式供給には、小型のものが使われる。
重力方式のスプレーガンの場合、10~1.8mm程度の口径のノズルを使うが、粘度の低い塗料に小口径ノズル、高い場合により口径の大きいノズルを使う。
また、仕上げ塗装を行う場合には細かい粒子の塗料を吹き付ける必要があるので、小口径ノズルを使うことになるが、圧力を高めて充分な空気量がなくてはならない。
例えば、空気使用量が150リットル/minとした場合、コンプレッサーは、少なくとも150x(1.2~1.3)÷100リットル/1PS(0.75KW)⇒2PS程度の能力のものが必要となる。
ノズルは、塗装面に対して直角におよそ20cm程度離して平行に動かし、塗料を噴出させる。
近すぎる場合は、ムラが出やすく、遠すぎると表面がざらつきやすい。
外壁面に対して直角かつ平行に動かすことは簡単なようであるが、足場板の高さの付近を半円形に動かすことが多く、また、上下の塗り継いだ(吹き付け重なり)箇所がムラになることがある。
塗装直後というよりも足場を解体してから発見することが多いトラプルである。
いずれにしても、スプレー方式は、塗料ロスの大きさもさることながら、周辺に塗料を飛散させ騒音を出すことが問題である。
隣家に近接して狭い作業現場が多く、周囲に影響を与えることが多いので、養生には、特に注意を払い、出来るだけ、低騒音、低圧力、低飛散のスプレーガンを使うように努めるべきである。