エコを重視した自動車塗装 水性か粉体かクリヤコートが最後の課題
2021/09/01
エコを重視した自動車塗装
水性か粉体かクリヤコートが最後の課題
環境問題には土壌・水質・大気汚染など多岐にわたる対応が必要で、自動車産業はリーディング・カンパニーとしての対応が求められています。
何度も述べてきましたように、塗料の環境問題における最大の課題はVOC(揮発性有機化合物、平たく言えば主として溶剤)の削減です。
自動車塗装では特にメタリックベースコートから発生する溶剤量が多く、1980年代後半より欧米を中心に、その水性塗料化が検討、実施されてきました。
メタリック塗料の外観品質を保つため、この塗料はスプレー塗装するときには低粘度で、塗料が被塗物に塗着したときには高粘度になって、たれやアルミニウム粉のむらを防ぐ設計になっており、現在は国内外で広く使われています。
次いで中塗りにどのような系を採用するかですが、欧州、日本では主として水性塗料が検討され採用されています。
米国ではむしろ粉体塗料の中塗りが採用されているケースが多く、考え方や品質のとらえ方に差があります。
クリヤコートを何にするかは最も難しい課題です。
欧州では下塗り~上塗り全工程の水性化(オペル社アイゼナッハ工場)、水性中塗り/水性ベースコート/粉体スラリークリヤコートの採用(ダイムラーベンツ社ラスタット工場)、粉体クリヤコートの採用(BMW社ディンゴルフィング工場)などの例があります。
しかし、塗膜の品質から考えて、まずは溶剤型のハイソリッド塗料で対応し、改良を待って水性塗料を採用するというのが日本の自動車メーカーの考え方だと思われます。
なお、粉体スラリーとは微粒子粉体塗料を水中に分散したものです。
近年、工程短縮、エネルギー節減の観点から中塗り/ベースコート/クリヤコートを重ね塗りし同時に焼き付ける、いわゆるスリーウェット方式が注目されています。
前述の粉体スラリーにもこの方法が採用されています。
ポイント
- エコを考えれば水性か粉体塗料
- 水性ベースコートは各国で採用
- スリーウェット方式に注目